第20回 小規模事業者持続化補助金はこんなことに使える補助金です
あと1週間ほどで小規模事業者持続化補助金の申請受付が始まります。
「小規模事業者持続化補助金は自営業者や小さな会社にとって使い勝手のよい補助金です」と言われます。
その一方で「販路拡大につながる機材しか補助の対象にならない」と聞き、申請を諦めてしまう人も多いようです。
それはもったいないです!
販路拡大、それが補助金の目的ですが、本当にあなたの欲しい機材は販路拡大につながらないのでしょうか?
調べれば調べるほど、こんなことにも使えるのか?と驚くことばかり。
知らないことは本当に損です。
補助金の目的
補助金の目的は、ズバリ「販路拡大」です。
小規模事業者持続化補助金には一般枠と創業枠があります。
一般枠が販路拡大なのは分かりますが、創業枠が販路拡大なのがよく分かりません。
創業枠となれば、創業に必要な機材を買いそろえるのに使えそうな気がしてしまいます。
でも、この補助金の目的は「販路拡大」なので、創業枠であっても、販路拡大に結びつく機材しか対象にはなりません。
素直に言えばアウトでも
「販路拡大」が何を指すのか?
この定義はあいまいです。
素直に言ってしまえば、対象外になってしまう機材であっても、無理やり販路拡大につなげ、それで理屈が合っていれば、対象となります。
物は言いよう
私は、補助金申請サポートの師匠から、そのことを度々言われました。
具体例でみてみましょう。
パン屋のオーブンの例
もし、パン屋さんが新しいオーブンを買いたいと思ったとします。
パン屋:新しいオーブンを買いたいので、補助金をください。
事務局:なぜ、新しいオーブンを買うのですか?
パン屋:オーブンが古くなったので、買い替えたいからです。
事務局:機材の買い替えに、この補助金を使うことはできません。
※小規模事業者持続化補助金では機材の買い替えは対象外となっています。
たとえ店主の目的は「補助金を使っての調理機材の買い替え」であったとしても、それは店主が話さなければ分かりません。
このように話したらどうでしょうか?
現在、私は食パンを中心にパンを焼いて販売しています。
毎日、主婦の方50人の来客があります。
でも、私の店舗のある地域では、学生が多く住んでいます。
もし、学生向けのパンを焼くことができれば、彼らもお客さんとして来てくれると思います。
しかし、現在使っているオーブンでは1日に50人分のパンしか焼けません。主婦の方へのパンで、いっぱい、いっぱいです。
だから、この補助金を使い、より多くのパンを焼けるオーブンを買うことで、学生向けのパンを焼くことができれば、主婦層だけでなく、学生へも販路を広げることができます。
本当は古くて性能が低いオーブンを新しくて性能が高いオーブンに買い替えたいだけであっても、そのことは他人には分かりません。
ウソはダメですが、目的の全てを話す必要はありません。
古いオーブンを買い替えるというのも目的の一つ。学生層へ顧客を広げるのも目的の一つ。
複数ある目的の中から、補助金の対象となる目的を取り上げるということです。
事業終了から1年後の報告では、効果を報告する必要があります。
でも、たとえ効果が上がらなかったとしても、補助金が取り消されることはありません。
店主がオーブンを買っても、さほど働きたくなく、新しいオーブンで毎日50人分、既存客のための食パンだけ焼いたとします。
でも、それは、怠惰とは限りません(怠惰であるかもしれませんが)。
店主が、心の病にかかり、仕事を増やすことができなかったのかもしれません。
家庭の事情が変わったのかもしれません。
それは、申請時には分からなかったことであり、仕方のないことです。
新しいオーブンになり、早くパンが焼けるので、仕事が楽になった。学生向けのパンも焼ける。
でも、そこまで働くのは嫌だから、やめよう。
心の中ではそうつぶやいても、報告書には、こう書きます。
毎日の来訪者50人(主婦層が中心)。新しいオーブンにすることで、作業時間の短縮につながった。
販路拡大に対する効果は?
原材料費等の高騰により、学生向け菓子パンの製造が難しくなったため、今回は見送らせていただいた。
物価の高騰が落ち着いたら、再度、取り組みたい。
結果は、販路拡大にはつながらず、店主の労働の軽減につながっただけです。
でも、これは結果であり、申請時に想定していたこと(本当は想定していたとしても、言わなければ分かりません)とは違っても、事務局がそれを非難することはできません。
販路拡大に結びつくかつかないかは結果であり、結びつかなくても「補助金を返せ」と言われることはありません。
店長は、実質、買い替えのために補助金を使うことができたこととなります。
ただし、次に紹介する超重要な文句を記載しておくことが必須です。
超重要な文句「◯◯する予定です」
1つすごく重要なことを言います。
申請時には「◯◯する予定です」と書く必要があります。絶対に「◯◯します」とは書いていけません。
いやらしい話ですが、「学生向けのパンを焼きます」と書いて、それをしなければ、「“学生向けのパンを焼きます”と申請しているのに、学生向けのパンを焼いていない」と事務局から指摘され、まずいことになります。
将来のことなど誰も分かりません。予定に止めることは、何事においても大事なことです。
当初は100パーセントそれをするつもりであっても、絶対に「◯◯する予定です」と書きましょう。
私の展示会出展の例
私は、展示会出展のため、この補助金を使いました。
◎申請時
<補助金で行うこと>(パン屋なら学生向けのパンを焼く)
東京で開催される展示会への出展により、今まで取引をしてこなかった従業員100人以上の大きな会社とつながることを目指す予定です。
<補助金の効果>(パン屋なら学生向けパンにより売上向上>
大きな会社とつながることにより、売上の増加、輸入原価を抑えることによる利益率の向上、定期的に量を輸入することによる独占販売権の更新、この3つの効果が見込めます。
◎実際
<補助金で行ったこと>
東京で開催される展示会への出展により、今まで取引をしてこなかった小さな自営業者と複数つながることを目指しました。
<補助金の効果>
小さな会社と複数つながることにより、1個あたりの利幅を大きくすることで、卸販売をしながらも、十分な利益を確保しました。また、卸販売により定期的な売上を達成することで事業を安定化させました。
当初は大きな会社をターゲットにしましたが、展示会のブースに来るのは、小規模な事業者ばかりでした。
そのため、ターゲットを大きな会社から小さな事業者に変更しました。
事業では頻繁にこのようなことがあります。
だから、絶対に「◯◯します」とは書いていけません。「◯◯する予定です」と書く必要があります。
ただし、インボイス登録や賃金引き上げなど、補助金の補助額上乗せとなる要件に関しては、予定とできません。行わなかった場合、補助金は上乗せ分だけでなく、全て取り消しになります。
では、これらを考えた上で、確実にアウトのものと、うまくいけばOKなものをあげてみます。
確実にアウトなもの
公募要領に対象外と名指しで載っている機材は、確実にアウトです。
でも、逆に考えれば、名指しで書かれていない物は、事務局の判断となるため、事務局へ聞いてみる価値があります。
<よくある確実にアウトな物7つ>
・販売している商品
商品は資産です。資産の購入に補助金は使えません。
・塾や教室で使用する有料教材の制作費用
・レンタル事業者が他人に貸す機材を購入する費用
・自動車
バンやトラックなど「事業専用」と言っても、ダメです。
・パソコン
「仕事にしか使わない」と主張しても通りません。
・既存機械の取替費用(全く同じものを同じ目的で買い換えること)
パン屋のオーブンの例のように、違う目的(学生向け)が入れば、この限りではありません。
・従業者用の椅子や机
事業所の福利厚生であり販路拡大ではないためです。
こんなことに使えます
公募要領を読むと、とても難しいことがあれこれ書いてあります。
イマイチ、何に使えるのかイメージできない人が多いのではないでしょうか?
そこで、こんなことに使っているという一例を紹介します。
ただし、補助金の基準は毎回変わります。担当者の判断の違いも大きいです。ここではそれを考慮した上で、今回も使えそうなものをあげてみます。
◎お店の備品
事務室の机や椅子など、従業員が使用する場所の物はダメです。お客様が関わってくる部分で使う物だけOKです。
お客様が座る椅子や机はOKです。
ただし、それは「新しいお客様を増やす目的で必要」という理屈づけが必要です。「既存客がくつろげるように新品に替えたい」と言ってしまうとNGになるので、言葉を選びましょう。
厨房の調理器具もOKです。
ただし、単純に新品に替えたいという目的では却下されます。あくまで、「新しいお客様を迎えるために必要」という名目が必要です。
たとえ、そのつもりではなくても(笑)。
先に紹介したパン屋の例がその典型的な例です。
他にも、新メニューを作成するため、必要な機材を取りそろえる必要などがあります。
その時も必ず「新メニューを取りそろえることで、新しい顧客層を得る」との名目を書く必要があります。
冷蔵庫や冷凍庫など保存機材も対象です。
販路を拡大するためには、それに対応できる設備が必要になります。そのことを主張すれば、審査に通ることもあります。
商品棚や店頭の備品など、お客様に関わる場所なら対象になり得ます。
エステなど、機材の購入も対象です。
何度も言いますが、買い替えはダメです。たとえ本当はその意図があったとしても、必ず販路拡大につなげる名目が必要です。
まったく同じ物を買うのはダメです。でも、少しでも違えば、なんとでも言えます。
例えば、同じような機材でも、少し作業効率が上がることで、より多くの人に対応できることを強調し、それにより販路拡大につながると主張することです。
はっきり言ってしまえば、お店の備品は、直にお客様に接する物だけではなく、調理機材など、裏方であっても、お客様が関わってくる部分なら、販路拡大に結びつけることで、たいてい対象にすることができます。
事務局の荒い説明では、本当に販路拡大に結びつかないとダメみたいに感じてしまいます。
でも、何度も言います。
実際に販路拡大に結びつくかどうかは、結果の話。申請時に結果は分かりません。
意図に関しても、本当の意図は申請者の頭の中だけ。
目的も、1つである必要はありません。
複数の目的の中に、1つでも販路拡大につながりそうなものがあれば、それを主張することで、対象とすることが可能です。
真面目な人ほど、本当は補助金を受けられるのに、公募要領の言葉を厳格にとらえ、申請に躊躇し、補助金を受けられない。
柔軟な人ほど、あまり深く考えず、気軽に申請し、補助金を受けていく。
それがこの補助金の実態です。
備品購入では、1つ忘れてはならないことがあります。
補助金で買った備品は法定耐用年数の期間もしくは5年間(購入金額50万円以下の機材の場合)は事務局の許可がなければ処分できないことです。
「買ってはみたもののいらなくなった」「事業を辞めたい」「誰かに売り払いたい」など、処分するにも事務局の許可が必要です。
また、見落としがちな点は、お店自体の譲渡などです。
ある人が補助金を受け、店舗の備品を購入したそうですが、翌年、家族内で話し合い、その店を兄弟に渡したそうです。
そこで備品も全て兄弟の物として名義変更したのですが、補助金の問題が出てきてしまいました。
結局、この方は、事務局に報告せず、そのまま済ませてしまったそうです。でも、それはいけないことです。
そのような時は、事務局へ連絡し、指示をあおぐ必要があります。
◎お店の改築費
その改修が販路拡大に必要という理屈づけができれば、対象となります。
トイレが古いため若い人から嫌煙されていると主張し、若い顧客を増やすための店舗トイレの改装工事。
キッチンカーの購入は補助の対象ではありませんが、「中古の軽バンを購入し、それをキッチンカーに改装し、移動販売することで販路拡大に結び付ける」と言えば、車の改装費用は対象となります。
◎広告の掲載やチラシの作成
広告の掲載やチラシの作成は、販路拡大そのままなので、特に技巧を尽くさなくても、すんなりと申請できる分野です。
でも、私は、以前、ポスティングチラシ作成のため、この補助金を申請して落選しています。
当時は、申請書の書き方をまったく知らず、ただ、商工会議所の担当者に言われるまま、彼のチェックを受けただけでした。
今、見返してみれば、必要なことがほとんど書かれていませんでした。
申請書(様式2・経営計画/事業計画)には独特の書き方があります。
それを知らなかったからです。
後述しますが、これを知らなければ、どんな計画でも、採択を受けることは難しいと思います。
また、第20回の公募要領では、広告の掲載やチラシ作成のみの申請はできないとなっています。
またこれらの費用に使える補助金額の上限が30万円になっています。
そのため、何か他の事業にくっつけて、申請する必要があります。
例えば、展示会出展、イベントなど、くっつける事業を考える必要があります。
とはいえ、そんなすごいことをする必要はありません。
地元の物産展への出展程度なら、数万円でできます。
それにくっつけ、広告の掲載やチラシ作成を申請すれば、OKです。
後述するウェブサイト関連や展示会などとは相性がよいです。
広告を出し、ウェブサイトへ誘導。広告の掲載費用とウェブサイト作成費を同時に申請ならOKです。
チラシを出し、そのチラシに展示会へ誘導する一文を入れます。それならチラシ制作費と展示会費を同時に申請できます。
◎ウェブサイト制作・改修費
前回まで、ウェブサイト制作・改修の費用に対する補助金は、補助率が4分の1にされていました。
でも、今回は、他の補助率と同じく3分の2の費用が補助されるようです。
ただし、補助額の上限は前回の50万円から30万円に引き下げられ、前回同様、他の経費と一緒に申請する必要があります。
こう聞くと難しいようですが、それほど難しい話ではありません。むしろ他の補助率と同じになったことで、より使える分野になりました。
これこそ、広告費との相性がよいです。
ランディング・ページ作成し、それをチラシで広報する。
ECサイト制作と同時に購入者への商品説明チラシを作成する。
ホームページ改修の費用と同時に、ホームページを知ってもらう広告を商工会議所の広報誌へ折り込む。
などなど、いろいろ考えられます。
◎展示会出展の出展料やブース装飾費および旅費
展示会に出展する場合は、使わなければ損です。
私も、今回、フルで使ってみて思うのは、展示会の結果に関わらず、お金が返ってくることのありがたさです。
展示会に出展しても、良縁があるかどうかは運の要素が大きいです。
縁があっても、お金が入ってくるまでは時間がかかるもの。
そんな不安な時、補助金で出展費用の3分の2が返ってくるのは、本当にうれしいです。
精神的な余裕にもつながるため、相手企業との交渉においても、焦らず、じっくり交渉できます。
費用が被らなければ、2つの補助金も利用可
今回、私は展示会出展にあたり、豊橋市販路開拓支援事業費補助金と小規模事業者持続化補助金を使いました。
公募要領を読むと、他の補助金などを使う場合は、それを申請しなければいけないことなどが書かれてあります。
確かに同一の費用で別々の補助金を受ける場合は、いろいろと問題があるようです。
でも、一つの事業の別々の費用に関し、別々の補助金を受ける分には、特に問題はないようです。
この点は、必ず事前に問い合わせておく必要があります。確かなことは言えません。
ただし、私の場合、展示会の出展費用は豊橋市販路開拓支援事業費補助金を受け、その他の費用は小規模事業者持続化補助金(一般枠)を受けることができました。
2つの補助金のおかげで、もらえる額も合計70万円超ほどです。
もし国と市町村の補助金が使えそうなら、同時に使えないかどうか?事務局に聞いてみる価値はあります。
申請書の書き方を間違えると採択されません
小規模事業者持続化補助金の申請には様式2(経営計画・事業計画)の提出が必要です。
しかし、様式2には必要な書き方の形があります。それを知らないと、採択されません。
私がまだ補助金についてあまり知らない時、この補助金を申請して採択されなかったのは、その書き方を知らず、申請の項目を読み、それにそのまま答えただけだったからでした。
小規模事業者持続化補助金では、申請に商工会・商工会議所が発行する様式4(事業支援計画書)が必要です。その発行に関して、商工会・商工会議所の職員に申請書類(様式2・経営計画/事業計画)のチェックと指導をしてもらうことになります。
でも、彼らは、申請書の書き方など教えてくれません。
必要事項が抜けていなければ、OKを出してくれます。
彼らの指導だけでは、補助金の採択には通りません。
自分で申請する場合、必ず、商工会・商工会議所などが公表している記載例をネットなどで確認し、様式2(経営計画・事業計画)の書き方を勉強しておく必要があります。
すごくクセのある構成になっています。
まずはその構成を知らなければ、申請しても、通りません。
一旦全額払う必要があります
補助金はとても助かるものです。でも、1つ忘れてはならないことがあります。
それは、補助金は、物を買う時、補助してくれるものではなく、物を買った後で、補助してくれるものであることです。
一旦は全額支払わなければならないので「お金がたりないから補助金を使う」ということはできません。
最後に
私の補助金申請サポートの師匠の標語にこんなものがあります。
この世は情報を知っている人だけが得をする世界。だから、情報を知っている人を増やしたい。
私もそう思います。
私はもともと市役所で生活保護のケースワーカーをしていました。
生活保護という制度について知っている人は多いですが、どうしたら申請に通るか?知っている人は少ないです。
窓口に来て「困った」と言っても、「まだ働けるなら働きなさい」と追い返され、困っている人たちを見てきました。
市役所の職員は鬼になって追い返しているわけではないです。
ただ、生活保護の申請をするには必要な要件を満たしていることを申請する必要があり、それをしないから、申請書を受付けられないのです。
生活保護のように差し迫ったことだけでなく、世の中、そんなことばかりです。
そして、そんなものの内、事業者にとって最も身近なものが、補助金です。
何が対象になるか知らない。難しい公募要領を読んでもいまいちイメージがつかめない。
そうやって、もらえるものももらえずに過ごしています。
本当に、もったいないです!
